愛犬との暮らしの中で、「もしもの時」の備えについて考えたことはありますか?
地震、台風、洪水…突然の災害に備えて準備しておきたいけれど、何から始めればいいのか迷ってしまう飼い主さんも多いのではないでしょうか。
この記事では、犬の防災グッズについて、絶対に必要なもの・あると便利なもの・犬種別の注意点まで徹底解説します。
いざという時に備え、愛犬と一緒に安全に過ごせるよう、日頃から準備を整えておきましょう。
犬の防災グッズが必要な理由とは?

人間でさえ不安に駆られる災害時、愛犬はさらに大きなストレスにさらされます。何より重要なのは事前の準備です。ここでは、災害前に愛犬の防災グッズを揃えておく必要性について見ていきましょう。
災害時に愛犬を守れるのは飼い主さんだけ
救援物資としてペット用フードが届くまでの約5~7日間、愛犬の命を守れるかどうかは飼い主さんの備えにかかっています。避難所でも高齢者や病人のケアが優先され、ペット用品の支援は後回しになることが多いのが現実です。
環境省が推奨する「同行避難」の考え方は、飼い主さんが愛犬と共に避難し、その安全に責任を持つというものです。
日頃から愛犬に寄り添い、信頼関係を築いている飼い主さんだからこそ、非常時にも落ち着いて行動し、愛犬を守ることができるのです。
災害時に起こりうる愛犬のトラブル
環境の急変によって、普段は温厚なワンちゃんでも予想外の行動を取ることがあります。激しく吠えたり、怯えたり、時には噛もうとしたりすることも。これは、ストレスや不安のサインです。愛犬の鳴き声や排泄物の処理が周囲とのトラブルになることも少なくありません。
また、ワンちゃんの健康状態にも注意が必要です。
災害時には環境や食事の突然の変化により、体調を崩しやすくなります。シニア犬や持病のあるワンちゃんは特にリスクが高く、普段以上の注意深い観察と対応が必要です。
ペットの防災対策の実施状況
アイペット損害保険の2024年調査によると、愛犬のために防災対策をしっかり実施している飼い主さんは全体の55.7%にとどまっています。つまり、半数近くの飼い主さんが十分な準備をしていないということ。
多くの飼い主さんが「防災対策の必要性は理解しているけれど、具体的に何を準備すればいいのかわからない」と感じています。どんなグッズをどれくらい準備すべきか、明確なイメージを持つことが難しいのも事実です。
環境省のガイドラインに基づいて、災害発生後の混乱期を乗り切るだけの備蓄や防災グッズを準備することが大切です。
【必需品】愛犬の命と健康を守る防災グッズ

災害時、愛犬の命を守るために絶対に必要なものがあります。ここでは、愛犬の命を守るための最低限の防災グッズについて解説します。
フード・水・薬(7日分以上)
環境省のガイドラインでは、フード・水・薬は最低でも5~7日分以上備蓄することが推奨されています。療養食が必要な犬やアレルギーを持つワンちゃんの場合は、通常より多めの10日分程度の備蓄を検討することをおすすめします。
水は生命維持に直結します。犬の体重1kgあたり1日50ー60mlを目安に計算してみましょう。つまり、ワンちゃんの体重が10kgなら1日600ml、7日分で4.2Lの水が必要になります。
備蓄を効率的に管理する方法として「ローリングストック法」がおすすめです。普段使っているフードや水を少し多めに買い置きし、古いものから使いながら、使った分だけ買い足していく方法です。この方法なら、常に新鮮な状態を保ちながら必要量を確保できます。
キャリーバッグ・クレート・首輪・リード
愛犬を安全に避難させるために欠かせないのがキャリーバッグやクレートです。
避難時は上から物が落下する危険もあるため、丈夫なハードタイプのキャリーバッグがおすすめです。小型犬であれば、飛行機の機内持ち込み可能サイズが持ち運びしやすく実用的でしょう。
大型犬を飼われている方は、車での避難を想定してハードクレートを準備しておくと安心です。使わない時にコンパクトになる折りたたみ式のものもあり、普段は場所を取らずに収納できます。
首輪やリードは、混乱した状況下でワンちゃんを守るための命綱となります。災害時の興奮状態では、普段おとなしい子でも予想外の行動をとることがあります。伸縮しないタイプで、強度があり体から抜けにくいものを選びましょう。
排泄物処理用品(ペットシーツ・ゴミ袋)
通常の2倍以上の吸収力を持つタイプのシーツなら、交換回数を減らすことができるため、限られた備蓄でより長く対応できます。平均的には1日あたり4~6枚、あまり替えられない場合は2~3枚が必要です。
ペットシーツは、最低でも7日分は確保しておきましょう。
匂いが抑えられるタイプのゴミ袋もトラブル防止に役立ちます。消臭機能付きの袋を選んだり、二重にして使えるよう多めに準備しておいたりするのが良いでしょう。災害時は水の使用も制限されることが多いので、ウェットティッシュなども併せて準備しておくと、より衛生的に排泄物の処理ができます。
【あると便利】愛犬と快適に過ごすための防災グッズ

災害時には愛犬との避難生活を少しでも快適にするためのグッズも必要です。ここでは、愛犬のストレスを軽減し、健康を維持するために役立つ防災グッズを紹介します。
衛生用品(タオル・ウェットティッシュ・ブラシ)
避難生活では入浴できない状況が続くことが多いため、ペット用ウェットティッシュは必須アイテムです。足裏や排泄後のお尻周りを清潔に保つことで、皮膚トラブルや感染症を予防できます。
タオルは最低でも5〜6枚用意しましょう。体を拭いたり、寝床にしたり、さらには緊急時の止血や包帯代わりにもなる万能アイテムです。
避難生活が長引くと被毛が絡まりやすくなるため、普段お使いのブラシを持参しましょう。日々のブラッシングは皮膚トラブルの早期発見にもつながり、ストレス軽減効果も期待できます。
愛犬の情報を記載したもの
はぐれてしまった時のために、愛犬の写真を複数枚用意しておくことをおすすめします。顔のアップ、全身、そして飼い主さんと一緒に写ったものなど、様々な角度から撮影した写真があると良いでしょう。写真は防水ケースに入れて保管しておくと安心です。
愛犬手帳やワクチン接種証明書などの書類も重要です。避難所での受け入れ時や緊急の獣医療が必要になった時に役立ちます。食事の内容や回数、かかりつけの動物病院情報、愛犬の好みや苦手なことをまとめた飼育メモも準備しておくと良いでしょう。
愛犬のストレスを減らすグッズ
愛犬が普段から遊び慣れているお気に入りのおもちゃは、見知らぬ環境でも心の安定につながります。匂いや感触が馴染みのあるおもちゃを1〜2個、防災バッグに入れておくと安心です。
ワンちゃんが普段使っているバスタオルやブランケットも大切です。自分の匂いがついたものが近くにあるだけで、緊張状態にあるワンちゃんの心が落ち着くことがあります。
ストレス発散に役立つおやつも欠かせません。噛む時間が長めのものを選ぶと、愛犬の気持ちを落ち着かせながら時間を過ごせます。
【犬種・サイズ別】必要な防災グッズの違い

犬種やサイズによって必要な防災グッズは異なります。小型犬、大型犬、そして年齢による違いを理解し、愛犬に合った防災対策を考えましょう。
小型犬向け防災グッズの特徴
小型犬は体重あたりの水分必要量が大きく、体温変化も激しいため水分管理がとても重要です。5kg未満の超小型犬であれば1日約300mlの水が必要となります。脱水症状が出やすい傾向があるため、通常の飲料水に加えて、緊急時でも与えやすい水分補給ゼリーも防災グッズに加えておくと安心です。
避難時には、キャリーバッグやスリングが大活躍します。「キャリーは安全な場所」だと認識させるため、普段から好きなおやつや玩具をキャリーに入れて、ポジティブな経験を積ませておきましょう。
チワワやミニチュアダックスなどの短毛種は、体温調節が苦手なため、コンパクトな防寒着も準備しておくと良いでしょう。
大型犬向け防災グッズの注意点
大型犬は水分摂取量が多く、30kgの犬であれば1日約1.8Lもの水が必要になります。限られた水を効率よく与えられるよう、携帯用の給水ボウルも必須アイテムです。
徒歩避難に備えた頑丈なハーネスリードも準備しておきましょう。緊急時にはワンちゃんが興奮してパニックになりやすいため、通常の何倍もの力が出ることを考慮し、強度の高いハーネスを選ぶことが安全対策として欠かせません。
災害時こそ、普段のしつけが生きてきます。「待て」「おいで」などの基本コマンドを確実に身につけさせておくことが大切です。
高齢犬・子犬の特別な配慮
シニア犬は喉の渇きを感じにくく、脱水リスクが高まります。ウェットフードや水分の多いおやつを防災バッグに入れておくと、水分補給の助けになります。
関節炎などの症状がある場合は、硬い床での生活が辛いこともあります。折りたたみ式の柔らかいマットを用意しておくと、避難所での負担を軽減できるでしょう。
子犬は消化機能がまだ発達途上。ペット用ミルクやふやかしやすいフードを備蓄しておくと安心です。免疫力も完全ではないため、消毒用品やペットシーツなどの衛生用品を多めに用意しておきましょう。
まとめ

災害時に愛犬の命と健康を守るためには、日頃からの備えが欠かせません。防災グッズの準備は、責任ある飼い主さんの立場として必ず行っておきたい大切な取り組みです。
フードや水、キャリーバッグ、衛生用品といった基本的な必需品はもちろん、愛犬のストレスを軽減するためのおもちゃやブランケットなども用意しましょう。犬種やサイズ、年齢に合わせたアイテム選びが、いざという時の安全を左右します。
もし、愛犬の防災グッズについてさらに詳しく知りたい場合は、当サイトの関連記事や、『chico』雑誌版の防災特集も参考にしてみてください。
大切な家族である愛犬と共に安心して暮らすために、今日から少しずつ防災の備えを始めてみませんか?